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名古屋地方裁判所岡崎支部 昭和44年(ワ)64号 判決

主文

当裁判所が当庁昭和四三年(ヌ)第二七号不動産強制競売申立事件につき昭和四四年三月二〇日作成した配当表中、原告宮地に対する配当額金二五一、四二四円とあるを金二二八、九八六円に

原告森田に対する配当額金七四六、六四〇円とあるを金六八〇、二五八円に

被告に対する配当額金二九四、三三六円とあるを金三八三、一五六円に

それぞれ更正する。

被告のその余の請求及び原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は第六四号事件、六五号事件を通じ、原告新美と被告との間に生じた分は同原告の負担、原告宮地及び同森田と被告との間に生じた分はこれを一〇分しその三を右原告両名の、その七を被告の各負担とする。

事実

第一  当事者双方の申立

一、原告

1  (第六四号事件につき)名古屋地方裁判所岡崎支部昭和四三年(ヌ)第二七号不動産強制競売申立事件(以下本件競売事件という)につき同裁判所の作成した配当表(以下本件配当表という)中被告に対する配当金二九四、三三六円を原告宮地に対する配当金七四、一二五円及び原告森田に対する配当金二三〇、二一一円と変更する。

2  (第六五号事件につき)被告の請求を棄却する。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決

二、被告

1  (第六四号事件につき)原告の請求を棄却する。

2  (第六五号事件につき)本件配当表中原告宮地に対する配当金二五一、四二四円及び原告森田に対する配当金七四六、六四〇円を被告に対する配当に変更する。

3  訴訟費用は原告らの負担とする。

との判決

第二  当事者間に争のない事実

訴外名証株式会社が原告新美に対する強制執行として申立てた本件競売事件につき

イ  原告宮地は別紙債権目録(一)記載の債権に基き

ロ  原告森田は同目録(二)記載の債権に基き

ハ  被告は同目録(三)記載の債権に基き

それぞれ配当要求を申立てた。当裁判所は昭和四四年三月二〇日の配当期日において前記各配当要求に基き原告宮地に対し金二五一、四二四円、原告森田に対し金七四六、六四〇円、被告に対し金二九四、三三六円を配当する旨の本件配当表を作成した。

右配当期日において、原告三名は被告の、被告は原告宮地及び同森田の前記各債権につき異議を申立てた。

第三  原告の主張事実

一、債権目録(一)イの債権につき

原告宮地は昭和四三年六月一四日金三五万円を主債務者訴外深谷金吾、連帯保証人原告新美外一名にて弁済期昭和四三年八月一〇日、利息日歩四銭九厘、遅延損害金日歩九銭八厘の定めで貸付けた。

二、同(一)ロの債権につき

原告宮地は昭和四三年七月三一日迄に合計金一二六万円を訴外深谷に融資し、同日右債務を弁済期同年九月三〇日、遅延損害金日歩八銭二厘の定めで消費貸借の目的とし、原告新美はこれを連帯保証した。

三、同(二)の債権につき

1  原告森田は昭和四三年九月二五日訴外杉浦英司から同人の訴外深谷に対する債権金七九八、二七九円、訴外新美敬二から同人の訴外深谷に対する債権金五八九、五六九円、訴外今津保昌から同人の訴外深谷に対する債権金一、六〇七、一五二円、訴外杉浦政市から同人の訴外深谷に対する債権金七三五、〇〇〇円を譲受け、同日同訴外人に融資した金一五〇万円と併せ合計金五二三万円を弁済期同年一二月三一日、遅延損害金日歩八銭二厘の定めで消費貸借の目的とし、原告新美はこれに連帯保証した。

2  右譲受債権の発生原因及び譲渡人らの取得原因は知らない。

四、同(三)(イ)の債権につき

原告新美の連帯保証の事実を否認する。同原告は被告からの保証人の要求に応じようとしたが、被告の容れるところとならず結局連帯保証は成立しなかつたものである。

五、同(三)(ロ)の債権につき

訴外深谷は右債務につき

軽自動車一台      価格金一〇〇、〇〇〇円

発動機一台       価格金 八〇、〇〇〇円

パイプサポート一〇〇本 価格金一二〇、〇〇〇円

を被告に対し代物弁済としてその所有権を移転し決済した。

よつて右債務は消滅している。

第四  被告の主張事実

一、債権目録(一)の各債権につき

原告宮地の各貸付の事実を否認する。

二、同(二)の債権につき

原告森田の金一五〇万円貸付の事実並びに同原告の譲受債権の各存在及び原告新美の連帯保証の事実をいずれも否認する。

三、同(三)イの債権につき

1  被告は訴外深谷金吾に対し昭和四〇年一月頃から昭和四三年六月迄の間一一回位にわたり合計金一七〇万円を貸付けた。

2  被告は訴外深谷との間で昭和四三年七月二〇日過頃右貸金につき利息は月三分とし、同年八月末日を初回として毎月末限り元金二万円宛及びそれ迄の利息を併せ支払う旨約定した。

原告新美は右約定に際し訴外深谷の右債務につき連帯保証した。

3  被告は右貸金につき訴外深谷との間で、同年八月一七日利息を日歩七銭とし、返済の初回期日を同年一一月末迄猶予し二回分以上元金の支払を怠つたときは期限の利益を失うものとする旨、契約内容を変更し、原告新美はその頃右変更を了知した。

4  訴外深谷は同年一一月末及び一二月末に支払うべき割賦元利金の支払を怠り、期限の利益を失つた。

四、同(三)ロの債権につき

1  被告は訴外深谷に対し同年七月二五日金二九万円を利息月三分、返済期日同年九月三〇日の約定で貸付けた。

2  原告新美はその際訴外深谷の右債務につき連帯保証した。

3  前記第三の五記載の主張事実は否認する。

第五  証拠関係(省略)

理由

第一  債権目録(一)の各債権の存否についての判断

証人深谷金吾(第一、二回)及び同新美幸雄の各証言、原告宮地本人尋問(第一回)の結果並びにこれらにより成立の真正が供述されている甲第四号証及び成立に争のない甲第三号証によれば、原告主張事実一及び二各記載の原告宮地の訴外深谷金吾に対する貸付及び原告新美の連帯保証が存在したことは、一見明白のようにみえる。

しかし前記各証言及び本人尋問の結果に、成立に争のない乙第一七号証の一乃至二三及び乙第一八号証の一乃至七並びに証人原田只一及び同戸田鋹雄の各証言をも併せ考えると、次のような事情が認められる。即ち、訴外深谷は従前愛知県知多郡東浦町緒川において工場を設置し、ブロツク製造業を営んでいたのであるが、昭和四三年八月上旬支払手形の不渡を生じ、経営が行詰つたため、その頃右工場に債権者の参集を求め、同人の資産状態の資料として乙第八号証の一乃至四及び乙第九号証の一、二を出席者に配布したが、不渡手形を生じた原因についての深谷側の説明に債権者が納得せず、格別の善後策も決し得ないまま散会した。ところが同年九月一八日頃、訴外名証株式会社(代表者原告森田)の事務所において再び債権者が招集され、出席者訴外深谷の資産状態の資料として乙第一〇号証の一、二が配布されたが、これには前回の資料に記載されていなかつた原告宮地に対する一二五万円の大口借入金が計上され、席上同原告は今後訴外深谷を使用人として同人の事業を継続し、その利益で同人の債務を支払う旨発言し、強く債権者の協力を要請していた。一方原告宮地はこれに先立ち同月五日、同年五月二五日付抵底当権設定契約を原因として訴外深谷の右工場建物に根抵当権設定登記を得ていたのであるが、同年一〇月七日に至り、同年五月二五日に金一一五万円の証書貸付をしたとして(尤も原告宮地は第一回本人尋問に際して、同年七月三一日現在で訴外深谷に対しては本件係争債権以外の貸金はなかつたと供述している)右抵当権実行の申立をし、自らこれを競落した。又、同年一〇月八日には訴外朝日枡雄が訴外深谷の有体動産に対する強制執行を申立て、同月一二日前記工場内及び深谷の住居所在の物件が差押えられたが、右差押手続において原告森田が実質上の申立債権者として行動していたことが各差押調書債権者署名欄に同原告が過つて一旦署名押印していることにより窺われる。そして同年一二月七日に至り右差押物件は原告宮地の使用人である訴外今津保昌が競落した。以上の経過を経て現在では訴外深谷は原告宮地の経営する大成建設ブロツク部の従業員として同原告の所有に帰した前記工場及びその設備によりブロツク製造に従事している。

以上の認定事実に原告森田の債権目録(二)の成立が後記第二判示のようなものであること、右債権が前記工場競売手続中において本件競売事件におけると同様に、他の債権者が手続に参加するや原告宮地の本件(一)ロの債権と共に配当要求債権となつて右債権者に対する配当減殺が図られていること、原告宮地が前記本人尋問に際し、訴外深谷の倒産は昭和四三年九月末か一〇月初で八月上旬の不渡発生の事実は知らなかつたと深谷証言(第二回)にも反し、前記認定に徴し首肯し難い供述を行つていること、成立に争のない乙第一五号証の二によれば原告新美も別件訴訟においては訴外深谷の倒産前には金融機関に対するもの以外には保証していないと供述していること等をも併せ判断すれば少くとも前記第一回債権者集会後原告宮地は訴外深谷及び原告新美と相謀り、深谷に対する債権者の追及を可及的に排除し、その資産、事業を掌握すべく種々工作していた疑いが濃厚であり、原告森田も遅くも同年一二月頃迄にはこれに同調していると認められる。してみると本節冒頭掲記の各供述はいずれも措信し難く、従つて不渡手形発生後の作成にかかる公正証書である甲第三号証或は単なる私署証書である甲第四号証のみによつて、原告主張の前記各貸付の存在を認めることはできない。

他に右貸付の事実を認めるに足りる証拠はないから、債権目録(一)の各債権が存在するとの原告の主張は採用できない。

第二  債権目録(二)の債権の存否についての判断

原告主張二1記載の訴外杉浦英司外三名が原告森田に譲渡した債権は、被告においてその存在を争うところ、原告は債権発生原因乃至右訴外人らの債権取得原因につき何ら主張立証しない。そもそも右債権譲渡につき証人深谷金吾(第一、二回)及び同新美幸雄の各証言並びに原告本人森田(第一回)及び同新美の各供述のいうところを綜合すれば、訴外深谷の再建のため原告主張の日時頃前記訴外杉浦外三名の債権を原告森田が券面額の半額の代金で譲受け、右代金は右譲渡人らから更に訴外深谷に貸与し、且つ原告森田も別に訴外深谷に金一五〇万円を貸付け、右譲受債権額と合せ計五二三万円の貸金として甲第五号証を作成したものであるというのであるが、右譲渡債権者が原告宮地の使用人である前記訴外今津保昌の外はいずれも訴外深谷の縁戚であり、前記のとおり債権の存在自体については何らの証憑もないこと訴外深谷の事業は三ケ月程度で容易に再建し得るとは到底予測し難い状態であつた筈なのに、昭和四三年九月二五日付の前記甲第五号証に同年一二月三一日の期限が付されていること、既に支払能力の期待し得ない状態にあつた原告新美の連帯保証が殊更付されていること等に、前段認定の原告三名及び訴外深谷の利害関係を併せ考慮すれば、前示各証人及び本人の供述内容はたやすく措信し難く、甲第五号証及び甲第六号証の一乃至四は、その記載にかゝわらず、他債権者の債権行使を排除するため訴外深谷及び原告新美の名目上の債務額を増加させるため仮装された疑いが極めて濃厚であると認められる。

以上の外、債権目録(二)の存在を認めるに足りる証拠はなくこの点についての原告の主張も採用できない。

第三  債権目録(三)の各債権の存否についての判断

一、イの債権について

1  被告が訴外深谷金吾に対し昭和四三年六月迄に金一七〇万円を貸付け、同年七月二〇日過頃同訴外人との間で右貸金につき利息月三分、同年八月末日を初回として毎月末限り元金二万円宛及びそれ迄の利息を併せ支払の約定をしたことは原告らが明らかに争わないのでこれを自白したものとみなす。右事実によれば、被告は訴外深谷に対し右約定の如き条件による金一七〇万円の準消費貸借上の債権を有していたものである。

2  成立(及び原本の存在)に争ない乙第一四号証、乙第一五号証の二及び乙第一六号証の二乃至四、証人相木秋由、同矢田金治及び同矢田光治の各証言、被告本人尋問の結果並びに原告新美本人尋問の結果(一部)によれば、右準消費貸借成立の日時頃、主債務者として訴外深谷が、連帯保証人として原告新美が連署押印した金一七〇万円の借用証書が被告に差入れられたことが明らかである。なお乙第一五号証の二中には右証書には利息につき日歩三銭又は三銭五厘と記載されていたとの部分があるが、右は乙第一四号証及び乙第一六号証の二乃至四の各記載並びに証人矢田光治の証言及び被告本人尋問の結果に照らし、にわかに措信できない。

ところで原告新美本人は、右証書は被告に差入直後、同原告の保証では不満であるとして被告より返戻されたと供述し、前記乙第一五号証の二及び証人深谷金吾の証言(第二回)中にも右と同旨の部分がある。しかし後記二のとおり被告は同年七月二七日原告新美の保証のもとに訴外深谷に金員を貸付けているのであるから、特にこの場合についてのみ同原告の保証を忌諱したとは考え難いし、前記乙第一四号証及び乙第一六号証の二並びに証人相木秋由の証言及び被告本人尋問の結果によると、訴外深谷が一旦差入れた前記証書を、後日更に他の保証人の署名押印を得て来ると称して被告から借受けたのであつて、原告主張のように被告が不要の証書として返戻したものではないことが認められる。なお、当初右証書差入れの際、被告が即時これを返却したものではないことは、右深谷金吾もその証言(第二回)中において認めるところであり、他に以上認定に反する証拠はない。

以上の認定事実によれば前記借用証書を被告が受領した際、訴外深谷の前記1記載の被告に対する債務につき、原告新美の連帯保証が成立したものと認めるのが相当である。したがつて原告新美は右1記載の条件(但し利率については利息制限法による制限がある)即ち、昭和四三年八月末日以降毎月末限り内金二万円宛を経過利息と共に被告に支払う義務を負つたものというべきである。

3  被告と訴外深谷との間で同年八月一七日同一債務につき同年一一月以降毎月末限り日歩七銭の割合による利息及び元金二万円宛を弁済すること及び二回分以上右元金の支払を怠つたときは期限の利益を失う旨約定したことは、原告らが明らかに争わないのでこれを自白したものとみなす。右事実によれば、被告と訴外深谷との関係では、前記1の準消費貸借上の債務は右のとおりの内容に変更されたものというべきである。

原告新美は前記のとおり右1の準消費貸借の連帯保証人であるから、民法第四四八条の趣旨により、被告訴外深谷間に行われた右主債務内容の変更中、右弁済期限延長の点は、従前の1の債務条件に比し債務者に有利であるので原告新美にもその効力が及ぶと解することができる(利率も従前の定めより軽減されているが、いずれも利息制限法の規定を超えるので法律上の支払義務は同一である)が、分割弁済を怠つたときの失期約款は、従前存しなかつた債務者に不利益な定めであるから、たとえこの点につき原告新美が通知を受け、又は変更の事実を了知したとしても、積極的に右変更を承諾する旨の明示又は黙示の意思表示がない限り同原告についてその効力を認めることはできない(分割弁済の始期が三ケ月間延期されるとしても、新たな失期約款により債務者が一時に全額支払義務を負う危険を生ずることは重大であるから、右変更を全体的に考察しても変更前に比し債務者に有利となつたとは断定できない)。そして同原告がかゝる意思表示をしたとの主張立証はない(むしろ前掲証人相木及び同矢田両名並びに被告本人の各供述等によれば、右債務内容変更が行われた時期には同原告は保証の意思はない旨表明していたことが窺われる)のであるから、結局同原告は、前同日以後被告に対し訴外深谷の右元金一七〇万円の債務につき、同年一一月以降昭和五〇年一一月迄毎月末毎に元金内金二万円宛及び期限未到来分の元金に対する利息制限法による制限利率年一割五分の割合による利息金の各支払義務並びに右各期限経過後各元金二万円の支払済迄これに対する前同年一割五分の割合による各遅延損害金(賠償額予定の特約の存在を認めるに足りる証拠はない)の支払義務があるというべきである。

4  被告の右債権に基く配当要求申立が元金全額及びこれに対する昭和四四年一月一日以降本件配当期日である同年三月二〇日迄の遅延損害金につきなされていることは当事者間に争がない。しかるに、右3に認定したところによれば右配当期日現在において弁済期の到来した元金は昭和四三年一一月分から昭和四四年二月分迄合計金八万円であり、これに対し昭和四四年一月一日以降発生した遅延損害金は初回及び第二回分の元金合計四万円に対し右同日から、第三回分の元金二万円に対し同年二月一日から、第四回分の元金二万円に対し同年三月一日から、各年一割五分の割合により生じたもので、同年三月二〇日に至る迄の合計は金一、八五八円であること計数上明らかである。

従つて債権目録(三)イの配当要求債権は、元利合計金八一、八五八円の限度でその存在を認むべきものである。

二、ロの債務について

1  被告が訴外深谷に対し昭和四三年七月二七日金二九万円を利息月三分、返済期日同年九月三〇日の約定で貸付け、原告新美が右債務につき連帯保証したことは原告らが明らかに争わないのでこれを自白したものとみなす。

2  原告は右貸金債務につき訴外深谷が事実欄第三の五記載の各物件を代物弁済として被告に譲渡決済したと主張する。前記乙第一四号証及び乙第一六号証の三、四、証人深谷金吾(第二回)の証言並びに被告本人尋問の結果によれば、昭和四三年七月末か八月初頃、訴外深谷が被告に対し、右各物件を売渡す旨記載した売渡証(甲第二号証の一乃至三の原本、日付はいずれも遡及して記載されている)を交付し、うち軽自動車一台については被告に引渡したことが認められる。しかしながら、右乙第一六号証の三及び被告本人の供述によると、後になつて訴外深谷から右自動車を被告方で使用しないよう申入があつた事実が、証人相木秋由の証言によれば同年九月末頃、訴外深谷が被告に対し右二九万円の支払の猶予を求めている事実が認められること、右深谷金吾自身の証言(第二回)によつても、右軽自動車以外の物件については同人が依然保管を継続し、しかもその保管方法は他債権者よりの強制執行の対象となつているかどうかも判然としないほど無頓着なものであると認められることに照らすと、同証言中、右売渡証の差入、自動車引渡が代物弁済の趣旨で行われたとの部分はたやすく措信し難い(なお成立に争ない乙第一八号証の六によれば、右深谷保管の物件と同種の物件―おそらく同一物件―が、動産競売手続において執行官により原告主張価格の約一割程度に評価され、かつ競落されていることが認められる)。右の外原告の全立証その他本件全証拠によるも未だ右代物弁済の成立を認めるに足りないから、原告の前記主張は採用できない。

3  してみると、原告新美は訴外深谷の右元金二九万円の債務につき右元金額並びにこれに対する貸付当日より弁済期である昭和四三年九月三〇日迄の利息制限法による制限利率年一割八分の割合による利息金及びその翌日以降元金支払済迄前同一割八分の割合による遅延損害金(賠償額予定の特約の存在を認めるに足りる証拠はない)の支払義務があるというべきである。

4  被告の右債権に基く配当要求申立が元金全額及びこれに対する昭和四四年一月一日以降本件配当期日である同年三月二〇日迄の遅延損害金につきなされていることは当事者間に争がない。しかるに、右3に認定したところによれば右配当期日現在において元金二九万円は弁済期到来し、これに対する遅延損害金は年一割八分の割合で、前記期間内において金一一、二九八円が発生していること計数上明らかである。

従つて債権目録(三)ロの配当要求債権は、元利合計金三〇一、二九八円の限度でその存在を認むべきものである。

第四  結論

以上の次第であるから、本件競売事件の配当要求債権中、原告宮地及び同森田各申立の分は右原告両名と被告との間でその存在を認めることができず、被告申立分は前段一、4及び二、4各判示の合計金三八三、一五六円の限度で存在が認められる。本件配当表中異議の対象となつた右原告両名及び被告に対する各配当の合計額は合計一、二九二、四〇〇円であるから右認定による被告の債権額金三八三、一五六円はこれを全額被告に配当すべく被告の本件配当表更正請求中、右限度を超える部分は理由がない。一方原告らの本件配当表更正請求はいずれも理由がないけれども、原告相互間においては原告宮地及び同森田に対する配当につき異議を申立てていないのであるから、前記係争配当額中被告に対し配当すべき金額を控除した残額金九〇九、二四四円については、右原告両名にその配当要求債権額に応じ按分して配当すべく、その結果原告宮地に対する配当額が金二二八、九八六円、原告森田に対する配当額が金六八〇、二五八円となることは計数上明白である。

よつて、被告の第六五号事件請求は、本件配当表中、原告宮地、同森田及び被告に関する配当額を右のとおり更正する限度で正当として認容し、その余の第六五号事件請求及び原告らの第六四号事件請求はいずれも失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条を適用して主文のとおり判決する。

別紙

債権目録

(一)イ 金四一四、四八四円

(内訳)一、金三五〇、〇〇〇円

原告宮地が昭和四三年六月一四日訴外深谷金吾に貸付け、原告新美が連帯保証した貸金債権元金

一、金九、九四七円

右に対する昭和四三年六月一四日以降同年八月一〇日迄の日歩四銭九厘の割合による利息金

一、金五四、五三七円

右元金に対する同年八月一一日以降昭和四四年一月一六日迄の日歩九銭八厘の割合による遅延損害金

ロ 金一、三七七、七八四円

(内訳)一、金一、二六〇、〇〇〇円

原告宮地が昭和四三年七月三一日訴外深谷に貸付け、原告新美が連帯保証した貸金債権元金

一、金一一七、七八四円

右に対する同年一〇月一日以降昭和四四年一月二二日迄の日歩八銭二厘の割合による遅延損害金合計金一、七九二、二六八円

(二) 金五、三二四、三四九円

(内訳)一、金五、二三〇、〇〇〇円

原告森田が昭和四三年九月二五日訴外深谷に貸付け原告新美が連帯保証した貸金債権元金

一、金九四、三四九円

右に対する昭和四四年一月一日以降同月二二日迄の日歩八銭二厘の割合による遅延損害金

(三) イ 金一、七九四、〇一〇円

(内訳)一、金一、七〇〇、〇〇〇円

被告が昭和四〇年一月頃から昭和四三年六月迄の間一一回位にわたり訴外深谷に対し貸付け原告新美が連帯保証した貸金債権元金

一、金九四、〇一〇円

右に対する昭和四四年一月一日以降同年三月二〇日に至る迄の日歩七銭の割合による遅延損害金

ロ 金三〇六、〇三七円

(内訳)一、金二九〇、〇〇〇円

被告が昭和四三年七月二五日訴外深谷に貸付け原告新美が連帯保証した貸金債権元金

一、金一六、〇三七円

右に対する昭和四四年一月一日以降同年三月二〇日に至る迄の日歩七銭の割合による遅延損害金

合計二、一〇〇、〇四七円

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